イカスミに比べ「タコスミ」が料理に使われない理由
レストラン等に入れば、イカスミパスタなどといった形で比較的簡単にイカスミを口にすることができます。
しかしイカスミに似ているものの代表格であるタコスミは、自分が口にするどころか食べられているという話すら聞きません。
これほど似通っている二つのスミがどうしてこれ程違う扱いを受けているのでしょうか。それは、一般にはあまり知られていない違いがあるからなのです。
イカスミとタコスミの大きな違いはその性質です。
基本的にイカがスミを吐くのは外敵から逃げるためですが、実はイカスミは粘度が大きく水中では拡散することなく漂います。
この漂うイカスミに敵が気を取られているうちにイカは逃げるのです。
一方タコは、スミを吐く目的は同じですがイカと違ってそのスミに粘度はありません。従って、水中ではすぐに拡散します。
これがいわば煙幕の役割を果たすことで、タコは危機を回避することができるのです。
この粘度の違いが料理への使いやすさに影響してきます。
粘度の大きいイカスミは麺などによく絡むのに対して、タコスミは全然絡まず美味しさが半減してしまうことがあるのです。
もう一つ、食用として使う上で重要な点はコストです。
実はイカはタコの何倍ものスミを蓄えています。粘度が小さいタコスミは、少量でも水中の中では煙幕の役割を十分に果たしますが、イカスミは粘度が大きいがゆえにそれ相当の量のスミが必要になってきます。
加えてスミの入っている位置もイカとタコでは違っていて、イカは取り出しやすいところにあるのに対して、タコのスミは非常に取り出しにくく途中でこぼれてしまうのです。
このため、タコスミはイカスミよりもコストがかかってしまいます。
それなら似たイカスミでいいということなのです。
以上のことによってタコスミよりもイカスミのほうが頻繁に流通するようになっています。
しかしながら、タコスミも全く流通していないというわけではなく、店によっては出してくれるところもまれにあります。
実際にそのような店に行く機会があったら、ぜひその味を確かめてみてください。