多くの動物が、「死んだふり」をする理由
闘争か逃走かという言葉があるように、野生動物が敵に直面した時にとる行動は大き分けて2つあると考えられています。
しかし、動物園から逃げ出した動物を捕まえる時、興奮しているはずの動物が急に大人しくなって死んでしまうことがあります。
これは「捕獲性心筋症」という症状によるものです。
捕獲性心筋症の動物はアドレナリンが出て活動的なはずにもかかわらず、心臓の鼓動が非常にゆっくりになり、血圧が非常に低くなっています。
これでは闘争も逃走も出来ません。
ではなぜこのようなことが起きるのでしょうか。また、この病気と似たような症状は人でも見られ、ギャンブルで全てを失った男や、家族をすべて失った人などに現れます。
人においては、「たこつぼ心筋症」という病気として認知されています。そしてこの病気はほぼすべての生物において現れます。
ではなぜこのようなことが起きるのでしょうか?
人を含めた動物のルーツは海にあります。
海においては地上よりも電気や音が伝わりやすく、そのため、サメを含めた捕食性の動物はロレンチーニ器官という電気信号を感知する器官を持っています。
そして、魚を追いかけ回し、魚の心臓の拍動が大きくなると、その魚の位置を探知します。
これに対抗する方法として魚たちは死んだふりをする技術を身につけました。
つまり、サメが近づいてきたときに、魚死んだふりをすると、心臓の拍動が弱くなりサメたちは魚の位置を探知することができません。
そのため、ここには何もなかったと勘違いして別の場所に行ってしまいます。
このような死んだふりができる個体が生き残ってきたため、ほぼすべての動物が死んだ振りにあたる捕獲性心筋症の症状を発生するようになりました。
現在でも、鳩などの鳥がキツネに捕食されそうになった時、死んだふりをして、キツネが油断した時に急に復活することで逃げ延びることは度々報告されています。
しかし一方で、死んだふりをすることは非常に危険なため、そのまま死んでしまうこともあります。
逃げ出した動物を捕まえる過程で動物を殺してしまうことはこのようなことが背景にあるためです。